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① 崎山カヤック旅

ガイドのプライベートカヤッキング

 9月に入ってぽっかりと予定が空いた。台風が過ぎてから予報ではいい天気が続きそうなのでせっかくなら家で事務仕事よりフィールドに出ようと考えていた。

 その矢先、仕事を辞めた友人がしばらく島を離れるというので一緒にどこか行こうと誘ってみた。僕がキャンプツアーに行くときにいつも手伝ってくれていたIさんである。

 当初は鹿川までカヤックで漕いで行き、そこから山を越えてウダラ浜まで行き、海岸線沿いに歩いて崎山を行こうと思っていたのだが、この暑さで歩きは冬にしようと意見が一致し、のんびりするなら半周などもせずに崎山湾周辺だけをのんびり5日間漕ごうということになった。

 ただの遊びじゃもったいないので目的としては


 ①普段行かない場所なので、じっくりとフィールド調査をする。

 ②パイミ崎は越えるけど、ウダラ石まで歩いて行く。

 ③「西表島のターザン」こと、砂川恵勇さんの住んでいたウダラ浜で一泊する。

この三つはやろうと考えていた。

9月3日

南の風 風力 3s/m未満 晴れ


 前日、飲み過ぎて気持ち悪くIさんに電話すると同じく二日酔いだという。出発時間を12時に変更すると、足りないものを補充したり、カヤックを積みなおしたり、いろいろしてたら1時になり、出発地の白浜についてパッキングをしていたら3時になってしまった。沖からはツアーが終わった同業者たちがいっせいに帰ってくる。「今から?」というはてなマークが出ている皆さんにニヤニヤしながら挨拶する。

 サバ崎の浜に4時到着。この日はここでビバーク。台風で浜が急になっておりテンバとしてはかなり狭い。

 魚を獲りに行き、夕飯。Iさんもいろいろ獲ってきたので、初日から豪勢な夕食。冷たいうちに飲まないと意味がないとビールを初日から飲みまくる。

 タープだけで寝たら、モッコと蟹に苦しめられ寝床も平らでなかったのでなかなか寝られなかった。

9月4日

南東の風 風力 3s/m未満 晴れ


 夜が明けると同時くらいに起きる。朝焼けがきれいだ。ゴリラ岩の上に浮かぶ月が見事。

 昨日の飯を温めて食べ、コーヒーを入れてまったりする。

 この日は風がなくて夜露がかなりタープテントについていた。ヒタヒタと満ちてくる潮に合わせてカヤックを海に浮かべる。サバ崎の陰から出ると朝日がまぶしい。いい天気だ。

 網取湾を横断せずにいったん湾の中に入っていく。小さい浜に流れ込んでいる滝に行き、再び潮にまみれるとわかりつつも真水を浴びに行く。ついでに水も補充。

 網取に向かって漕いで行くと、これがとんでもない凪。波一つない一枚の紙の上に僕らのカヤックの航跡だけがひかれる感じだ。順光でIさんを見ると、まるでサンゴの上に浮いているようである。

「俺がモデルで悪かったね!」

 まったくである。モデルがかわいい女の子ならもう少し生える写真になったであろうに・・・。

 網取にある東海大学の研究施設を越えてウルチ崎を越える。ここには突き出た奇岩があり、ライオンの頭のようにも見える。僕は勝手に「サーベルタイガー岩」と呼んでいる。

 ここを越えると崎山湾が見えてくる。横断するのは味気ないのでじっくりと海岸線をなぞるように漕いで行く。これが良かった。

 海洋環境保護区になっている崎山湾内は海菖蒲が繁茂し、非常に静かな湾である。その奥に入るにしたがいマングローブが見えてきて、ウポ川が見えたので奥に入り込んでいく。満潮とはいえ、これだけマングローブの間を漕ぎ抜けることができるのは楽しい場所だ。当然ながら魚も多く、純粋に楽しい。僕が西表島に来たころの船浦湾のような印象を受けた。

 沿岸を舐めるように漕いで行き、対岸にある川に入ろうとしたら、中からカヤックが出てきた。どうも崎山集落跡に住んでいる人のようだ。挨拶して後で伺うことにし、中に入っていく。すぐに戻るつもりだったが、なんか地形的に滝がありそうな雰囲気が出ていたのでカヤックを下りてIさんそっちのけで上流に向かって歩く。20分ほどで読み通り滝が現れた。全身に水を浴びてリフレッシュ。いやー、西表島は水が多くて最高だ。

 海に戻り崎山集落跡の前に出るとさっきのおじさんがいた。コーヒーを入れてくれるというのでお邪魔することに。そんな話をしていたらもう一組、カヤックがやってきてそのショップの人たちとも交えて海のそばにあるテーブルに腰かけてお話をした。

 30分ほどゆんたくして出発。潮が引いたら出られないのでシャレにならん。また帰りにでも寄ると約束してウバマへ。

 ウバマ浜のテンバに着くと、誰かが山の中に入っている跡があった。営林署の人が来ているのだろうと思い、二人でタープを張り終わると遅い昼食を食べ川に繰り出した。

 川の奥で川エビをとっていたのだが、キャンパーが多いせいか異常にスレている。何とか採れた。一人で上流に上がると何かに威嚇された。雄のイノシシに手ぶらで向かい合うのは怖いので正体も確認せずそそくさと逃げて今度は海に向かった。

 ウバマのバリは本当にきれいだ。白い砂地に根が点在し、透明度が素晴らしい。中層を魚が泳いで影を落としているのを見られるのは西表島でもなかなかないことだ。サンゴもかなり発達しており、サンゴ良し、魚良し、透明度良し、地形良しと言うことない。

 戻ると営林署の人はいなくなっていた。

 魚をさばいてエビと一緒に汁を作り、身は刺身にして食べた。

 この日は昨日の反省を踏まえてタープの下にテント(メッシュ)だけ張って寝た。Iさんは夜中にモッコにやられ、砂下で砂カニに鳴かれて悶えていた。今年はモッコが多い。

9月5日

南の風 風力5s/mくらい


 昨日と比べて1時間遅く起きる。朝方、通り雨が何回か降る。

 本日はパイミ崎を周り、ウビラ岩に登るつもりでいた。マル1日かけて歩いて行くつもりだったが海が凪いでいたのでカヤックで行って浜に上陸することにした。

 パイミ崎をまわるとさすがに風が強く波立っている。しかしうねりはなくサーフゾーンは皆無なのでリーフの中を漕いで行った。

 30分ほど漕ぐとウビラ岩の近くまで来たのだが、上陸するには波が強そうだったので途中のゴロタ浜に飛び込み、無理やりカヤックをゴロタの上に引きずりあげて上陸した。Iさんはこんな荒っぽい上陸は初めてだったので面喰っていたが、どこにでも揚がれるのがカヤックの素晴らしいところだ。

 巨岩、奇岩の間をすり抜けるように歩いて行き、15分ほどでウビラ石に到着。着いてみると突き出た岩のくびれ部分に上陸するのに適した場所があった。なんだ、カヤックでここまでこれたじゃんと、二人して落胆する・・・。

 それにしてもウビラ岩は見事だった。ここに来たかったのも東海大学出版会から出ている安間繁樹著の「ネイチャーツアー西表島」を読んだからで、ここにウビラ石の奇岩模様が書かれている。南から吹いてくる風と、正面に見える紺碧の大海原、背後にそびえる西表の急峻な山が見事な場所である。隣にあるベープ岩も気になったが、今回はここで引き揚げ、代わりにカヤックから逆にさらに歩いてピサ岩の近くにある滝に向かった。ここで思う存分真水のシャワーを浴びて、カヤックに戻りテントサイトに戻った。

 潮は小潮だというのにかなり速く流れていたが、思わずカヤックから飛び降りてドリフトダイブをした。パイミ崎で泳げるなんて滅多にないことだから面白かったが、地形と透明度に反して魚は少なかった・・・。

 テントサイトに戻ると遅い昼飯を食べ、Iさんは昨夜あまり寝むれなかったので昼寝をすると言っていたが、僕は隣の岩陰で寝ていたものの、カニやフナ虫に噛まれたりして散々だったのでカヤックとともにシュノーケルをしにいった。銛を持っていない時に限って大物に出会って、近くまで寄れるものである。この時も80㎝以上あるカーシビ(ゴマフエダイ)がウジャウジャいる穴の中に入ったが、その後夕飯獲りに行ったらお留守になっていた。

 この日も魚の刺身、カブト焼き、汁、魚の炊き込みご飯を食べて満腹。泡盛の消費が激しく、残り一日を見越してちびちびと水割りを作る。夜はさすがに今夜はテントを張って寝た。

9月6日

南西の風 3~6m/s 


 朝起きると、背後の山からモクモクと黒い雲が迫ってきて雷鳴が聞こえてきた。スコールが降ると撤収が面倒くさいので急いでテントをたたむが、運がいいことに雨はこちらまで来なかった。

 出発すると崎山湾に入り、おじさんに会いに行く。上陸するとおじさんは先日ヒザを痛めたらしく、今日はどこにもいかず療養するらしい。お土産の炊き込みご飯をあげるとぜんざいをごちそうになった。まさかこんな場所でぜんざいを食べられるとは思わなかった。

 午前中いっぱい、おじさんのこれまでの話などを聞いたり、今の生活のことなどを聞き、ある程度潮が満ちたところで御いとますることにした。

 崎山湾を横断して網取に渡り、岬の先端にあるユキシバラを回り込む。外側は波の浸食で面白い形をしておりなかなか良かった。何より8年前に来たときはただのバラスだったのが、サンゴが海底を覆い、何ともきれいだった。

 網取湾に入り込み、満潮の時だけ現れる潮吹き穴や洞窟などを巡ってどん詰まりのウダラ浜に到着した。

 ここはテレビ番組で有名になり、神戸の美術の先生が書いた本によって後世に語り継がれることになった(?)砂川恵勇さんが住んでいたことで有名で、恵勇爺が亡くなった後も何人もの人が訪れてテント生活を過ごしている場所のようだ。

 ウバマ浜で作業していたのは営林署の人ではなく船浮の池田さんたちで、その情報によるとウダラには今はだれも住んでいないということだったので、最後のビバークはそこに決めたのだ。

 残念なことに以前住んでいた人によって森の中は荒れており、それをあとから来たキャンパーなどが掃除して何とか住むことができる感じになっていた。当時は西表島一大きいと言われていたヤラブの木(テリハボク)は傾き倒れ、その傍らの広間にタープを張ってベースとした。

 森には川が流れ込んでおり、さっそく川エビをとるがここもスレまくっている。何とか二人で10匹くらいとってからカヤックに乗って魚を獲りに行く。

 夕方、夕飯を食べ終えるとバケツをひっくり返したようなスコールが降り、雷が鳴ったかと思ったら近くに落ちまくっていた。入り江の中にあり、山に囲まれたウダラは雷の音が良く響いてかなり迫力があった。

 雨は2時間ほどで上がり、星が見えてきたので外に出る。波打ち際に夜光虫がいるのでカヤックを滑らせてみた。パドルを水に入れるたびにキラキラと光る。時折遠雷が瞬き山を照らして何とも不思議な光景だった。

 泡盛を飲み干し、白湯を飲みながら焚火を見ていたが、じきに二人ともテントに入った。

9月7日

南西の風 5~7m/s


 朝は曇り。今まで天気が良かっただけに逆に涼しくて気持ちが良い。

 朝食を食べてコーヒーを入れていると浜に舟がやってきて上陸してきた。よく見ると船浮の池田さんである。この奥にあるタケノコを採りに来たようだ。しばらくして戻ってきたが、Iさんが前にここに住んでいた人と知り合いでその行方を知りたいと話をすると、色々なことに話が広がり、だいぶ長いことゆんたくすることに。コーヒーを出して話し込んでいると恵勇爺の思い出話などをしてくれた。

「なんなら、恵勇爺のDVD、やろうか!?」

おっと、ここにきてとんだサプライズである。豊原に送ってくれるというのでその約束だけすると、しばらくして舟に戻っていった。途中、ヤマネコの足跡を発見し「石膏で跡とらんと!また来ないとな・・・」と言って、落ちていた洗面器で足跡を覆っていった。

荷物をパッキングし出発する。南風の吹き降ろしが入り江の奥から吹くのでカヤックはすいすいと進んでくれる。

サバ崎をまわり、サバ崎灯台に寄り道してからイダの浜に上陸した。

「いいね~、ビキニがいっぱいだね~!」

さすがに5日も男二人でいると正常な男なら水着のねぇねぇは刺激が強い。ガンミするIさんを嗜めながら船浮の集落に生ビールを飲みに向かう。これが今回の旅の最後の楽しみであった。一杯でいいところを、なんだか勢いで2杯飲んでしまった・・・。やはりビールは生で冷たいに限るな~。

Iさんの知り合いと何人かゆんたくすると、再びカヤックに戻り出発地の白浜港に無事、戻ったのだった。

当店ツアーで崎山湾に行くには…

崎山湾はデイツアーで行くにはかなりのベテランの方でないと距離的に難しいと思います。

通常、2泊3日のキャンプツアーで行きますが、体力的もしくは技術的に自信のある方は1泊2日で開催します。ご希望の方はお問い合わせください。日帰りで崎山に行きたいという強者もご相談乗ります。どしどしご連絡ください。

また、船浮湾は「お任せコースタルカヤッキング」のコースで行くことができます。こちらも場所をご指定いただければ天候次第で可能です。

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