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⑥Taiaroa Head

2009年2月16日・17日


 フィヨルドランドを後にした僕は南島の南東海岸、ケトリンズコースト(Catlins coast)を経由してダニーデンに入った。余裕があればインバーカーギルからさらに南に行った港町、ブラフから船に乗ってスチュワートアイランド(Stewart Island)に行きたかったが、今ある装備ではここは漕げないなと思い(恐ろしく寒いし、水温が低すぎる!)諦めた。
 ケトリンズコーストは古き良きニュージーランドの風景が残っている場所としてニュージーランドの観光局も最近力を入れている地方らしく、確かに素晴らしい海岸線が続いていた。ここの模様は車での旅行記にでも書こうと思う(いつになるかわからないが…)。
 ダニーデンはスコットランドからの移民が多かったためにスコットランド風の建築物が多い、かなりシックで落ち着いた街で、急な坂が多いことでも有名だ。そのため、気持ちの良い風景が見える場所が多数ある。オタゴ大学があることで学生街でもあり、若者も多くてちょっと、長期滞在してみたい街ではある。
 しかし僕はそんなダニーデンに一泊もすることなく先を急いだ。 ダニーデンからオタゴ湾沿いに道を走らせてAramoanaという辺ぴな場所を目指す。
 ダニーデンという街はオタゴ半島というカギ状の形をした半島によって守られたオタゴ湾の奥にある街で、そのオタゴ半島は自然の多く残った場所である。ペンギンのコロニーやアザラシなども多く生息しており、街からちょっと行けば大自然に触れることができるいい場所なのだ。

 この半島の先端が、今回僕が行ったTaiaroa Headである。
 本来はこの岬にはかなり車を乗っていかなければいけないし、途中からは車を降りて歩いて行くしかない。しかもAlbatross(アルバトロス:アホウドリのこと)の営巣地があり、保護区になっているため一般の人はレンジャー付添のツアーに参加するしか行くことができないのだ。
 そのツアーに参加するのもいいのだが、せっかくカヤックを持っているのに一般人と同じようなアクセスをしてもつまらない。そこで半島の対岸からカヤックに乗って海からこの岬をまわって生き物を観察しよう…と、たくらんだのだ。 カヤック禁止など聞かないし、遊覧船があるくらいだからそれだけ注意すれば文句はあるまい。観光協会の地図にもカヤックのっている写真あるし、半日ほど遊んでいこうと思った。

dsc_0254_r.jpg 夕方、対岸のAramoanaに到着。
キャンプ場マークが地図にあったが、それらしきものは無し。
車乗泊と決め込む。
風が強かったが、夕日がきれいだった。
dsc_0255_r.jpg 古い桟橋が残っており、そこにカモメが留まって羽を休めていた。
みんな風下を向いて立っているのが面白い。
その他にアジサシもいた。日が暮れるとファーシールも揚がってきた。
dsc_0257_r_20210929014751029.jpg p2160048_r.jpg ダニーデンのスーパーで禁断の魚介類を買ってしまった…。
なぜならとっても気になってしまったから。
この日の夕飯はエイのヒレ。写真からするにガンギエイの類だから美味いとは思っていたけど、これがマジで美味かった!煮付けにしたのだが、意外な脂ののりと身の柔らかさ、軟骨のシャリシャリ感(コリコリじゃない)、臭みの無さ、そしてこのプライス!!$0.79だよ!? 当時の日本円で40円だから笑える。
p2170050_r.jpg 翌朝、カヤックを組み立てていざ出発! p2170049_r.jpg 砂浜はキサゴを中心とした砂地に住むマキガイの殻で覆われていた。
水質の良さがこれでわかる。
p2170053_r.jpg 半島には30分くらいで到着。
岸には第2次世界大戦のときのものだろうか、トーチカの跡がぽつぽつと残っている。
p2170054_r.jpg ファーシールはもはや全然珍しくない。 p2170057_r.jpg 柱状節理も場所によっては見ることができるが、全体的にかなり急な絶壁しかない。
カヤックで漕ぐには面白い場所だ。
p2170060_r.jpg これはファーシールではなく、シーライオン。
ニュージーランドのトドと思えばいいだろうか?
p2170065_r.jpg カヤックを漕いでいると、突然こいつが現れる。
アラスカで出会ったシーライオンよりこっちに興味がなさげ。
p2170069_r.jpg 潮間帯にはフジツボがつき、そのすぐ下にブルケルプが付着している。絶壁なので、まさに帯だ。 p2170075_r.jpg 前方から巨大な鳥が飛んできたと思ったら、アルバトロス!
いや~、アホウドリなんてなんて愚かな和名を付けてしまったんでしょうか、日本人!!
この鳥、実にカッコいいです。個人的にはカツオドリ(ガーネット)の方が好きだけど。
p2170078_r.jpg 半島の反対側(外洋側)に出ました。
次から次へと小さい岬が見えて、「その先はどうなってるんだ?」と、好奇心が刺激されて先に進んでしまう…。
この丘の上にもトーチカが見えた。
p2170074_r.jpg p2170095_r.jpg キリがないのでUターンして断腸の思い(?)で戻ることに。
ちょっとした入江に入って休憩。
ミルフォードサウンドの時みたいにファーシールがクルクル回りながら寝ていました。
p2170111_r.jpg タイアロアヘッドのライトハウスの真沖。
遊覧船もいたけど、何故か沖に出て行きました。イルカでも探しに行ったのかな?
p2170112_r.jpg タイアロアヘッドの先からちょっとだけ磯が出ていました。そこには多くの動物が上陸して休んでいた。
ファーシールの子供達がみんなでこっちを見ている。
かわいいねぇ。
dsc_0277_r.jpg 別のアングルから。
カヤックのツアーもないみたいだから、たまにしかカヤックなんてものは見ないのだろうね。
結構うねりがあって、写真撮るのは難しかった…。
p2170117_r.jpg こちらはアジサシの集まり。
最初は白い岩だと思っていました。
アジサシは結構イシュウするけど、ここまで集まるとすごいね。
p2170126_r.jpg 「グォ~zzz」

ラッコじゃありません
p2170128_r.jpg ここは半島先端部の斜面に造られたウミウの営巣地。
モーグルのコースみたいになってます。
一つ一つのコブが巣になっているようです。グアノ臭がすごかったな。下まで臭よってきました。
p2170133_r.jpg ホクホクの二時間ツーリングでした。
スタートした砂浜ですが、こんなにきれいだったのか!と、ちょっと感動したゴールでした。
ニュージーランドの海は濁っているイメージがあるので調子に乗りました。。。
p2170144_r.jpg 天気もよくて気温も高かったので、潜ることにしました!
南島の海の中は、どうなっているのかしらん??
p2170150_r.jpg ケルプの森を下りて行くとこんな感じ…。 p2170148_r.jpg 海牛の仲間。これ以外にもたくさん種類がいた。餌になる藻類が多いのだろうな。 p2170149_r.jpg Triplefin(ヘビギンポ)の一種 p2170175_r.jpg Triplefinの一種だと思う p2170172_r.jpg ブルーモキの若魚。下にあるのはホヤの仲間?ウミユリみたいな形状でした。 p2170159_r.jpg ケルプの森の中はアミの群れがすごい p2170167_r.jpg 左にあるのがイエローフット、右にある魚が手前にいるのがブラックフットのパウア p2170156_r.jpg カルフォルニアのジャイアントケルプに似ているBladder Kelp。
海底から長~く伸びていて、ホンダワラのような空気の入ったブイを作ってそれで浮いている。比較的潮の流れがない場所に多いようです。
p2170160_r.jpg 海藻の間からこもれ出る光はきれいだな。
しかしこの海藻、どこかで見たことがる・・・?
p2170186_r.jpg イエローフットパウア。個人的にはブラックより旨いと思った。 p2170187_r.jpg 刺身も日本のアワビっぽくて良い p2170188_r.jpg メカブとワカメ p2170190_r.jpg ワカメとアワビのフェットゥチーネ。もちろん肝入り。
美味かった~(笑)

 空はカンカンの良い天気で気温も高かったが、水温はメチャクチャ冷たい!!あまりの水温の低さにカメラのバッテリーが充電したばかりにもかかわらず、すぐに電池切れのサインを出してしまった!しかも手がかじかんでシャッターが切れない…。
 でもケルプの中を泳ぎまわるのは面白かった。うまくいけばファーシールも現れないかと思ったが、彼らを水中で見ることはできなかった…残念。
 

余談

 水温の冷たさに一時間が限界だったものの、南島の海を潜ることができてちょっとした充実感を感じながらウエットを干しつつカヤックを片づけて、この地を後にする。
 充実感の陰にはちょっとした収穫があったからかもしれない。寒い場所に多いイエローフットパウアを採ることができたこともあるが、それ以上にちょっとした発見があったからだ。上の写真をよ~く見てみるとわかるのだが、日本でもおなじみの海藻が写っているのがわかりますか?

 実はワカメがあったんです、ニュージーランドの海に!
 潜っている時から、「これはどっからどう見ても、ワカメだよな~?」と、思っていたのだが、その葉っぱの感じといい、しっかり岩に着いている部分といい、何よりメカブが付いているところは全く一緒なのである。
 試しに一株だけその海藻を採り、持って帰って食べてみることにした。

 キャンプ地にて湯がいてみると、これまた褐藻類の特徴である褐色から一気にきれいな緑色に変化した。メカブも刻むといっぱしにヌメヌメするではないか!
 食べてみると、納得、これはワカメだった。

 後日、帰化生物について別の要件で調べていたら、ワカメが外来生物としてニュージーランドに渡っているということが載っていた。確かにマハゼが船のバラスト水と一緒にオーストラリアに渡ってしまって当地で増えているという話を聞いたことがあったので、これには納得できる。ワカメもその胞子がバラストと一緒に海を渡り、生息環境が似ているこの地で繁茂してしまったという訳か…。

 ん~、将来ニュージーランド産ワカメが日本の食卓にのる日も近いか・・・?